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ADMRコラム104 「勘と経験と度胸」は引き継げる?

 中古車販売店の社長に商売のコツを聞いたところ「勘と経験と度胸」と言われたことが何度かある。中古車の相場や自社の客層などから仕入れや下取り、さらには販売価格をどうするか判断する。その場で決めないとビジネスチャンスを失いかねないから、時間をかけてじっくり検討するというわけにはいかない。


 市場動向や過去の顧客データ、在庫状況など詳しく分析して日頃からあれこれ考えているはずだ。しかし、最終的には成功と失敗を繰り返した経験により研ぎ澄まされた”勘”に加え、多額の資金を投入することを躊躇しない度胸が重要だそうだ。経験は別にして、勘や度胸は個人の才能や資質によるところが大きい。だからこそ「自分にしかできない」という自信や自負もあるのだろう。


 ただ、ビジネスとして考えるとどうか。ノウハウや知見が限られた人にしかないとすれば、引き継いでいくことが難しくなる。一代限りと決めていたとしても、社員のこともある。いずれは誰かにバトンタッチしたいのかもしれないが、感覚的なことで説明しようがないのかもしれない。


 整備や販売の現場でも同じようなことがある。暗黙知と呼ばれるものもその一つで、整備では不具合箇所の特定や作業の際の功利的な手順や力加減などであり、営業は「お客様の雰囲気で買うかどうかわかる」「迷うお客様の背中を押すタイミングと手法」といったところか。マニュアルにしにくく「自分だけのスキル」として”独占”できれば、その人はプライドを保ちやすい。しかし、ノウハウを会社全体で蓄積するのが難しく、当然、受け継いでいくのも容易ではない。


 その人しか理解できないノウハウや、他の人ができない技術があれば周囲から尊敬され、大切に扱われもする。それが自尊心にもつながるから、守りたい気持ちも理解できないわけではない。一方で、見方によっては仕事の「囲い込み」と言えなくもない。感覚的なものや個人の資質が大きな要素を占めるものは「言語化」して伝えるのが難しい。だから他者が容易に真似できない。


 個人のことだけ考えれば、それで満足だろう。しかし、会社という組織では必ずしも良いことではない。トップの資質が成功の鍵というなら、後継者はどう対応すればいいか戸惑うことになる。その社員だけが独特のノウハウやスキルを持っているとすれば、後世に伝えられないのは会社にとって大きな損失となる。それらを、どこまで言語化し”仕組み”としてつくり上げていくことができるか。難しい作業だが、それができた会社がどんな環境変化にも耐えられる、強い組織ということになるのだろう。


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