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ADMRコラム96 ミスを”得点”に変える

 先日、知人と食事に行ったときの話。知人が注文した品と少し内容が違っていた。単品とセットを間違えていたのが原因で、知人がスタッフに問い合わせると、すぐにお詫びを言って追加の品を持ってきた。その後、店長が出てきて改めて謝罪し、デザートをサービスで筆者の分まで持ってきてくれた。知人は、自分かスタッフのどちらが間違えたのかを不愉快そうに店長に確認していたが、そこは答えず、笑顔で受け流した。


 どちらが間違えたにせよ、明確にすると不快な思いが残る。だから笑顔でお詫びを言い、デザートをプラスすることで知人の不満を和らげようとした。欲を言えば、さりげないサービスを評価してもらいたいという気持ちがあったかもしれない。結果はその通りで、知人も最終的には「気をつかわせてしまって申し訳ない。ありがとう」と、満足そうだった。


 知人はその店に何度も行っている。店長は新任で面識がなかったようだが、対応次第ではお得意様を一人、失う可能性もあったはずだ。そう考えると、店長のやり方はミス(誰のミスかは別にして)を”失点”にせず”得点”につなげることができたと言える。


 重大なミスは責任や原因が明確になっており、謝罪も含めて真摯に対応することが不可欠と言える。言い換えれば、選択の余地は少ないということになる。これに対し小さなミスや、ミスとも言えないような誤りは対処の方法がたくさんある。「謝る必要がない」という考えもできるし、冒頭の店長のように品物まで用意して謝意を丁寧に示す方法もある。対処方法の幅が広いだけに判断が難しい。


 それがお得意様だったらなおさらだ。店舗や会社に親近感があり、信頼も寄せている。それだけに裏切られたと思ったときの反動は大きい。しかも些細なミスや言葉遣いが、思わぬところでお客様の琴線に触れてしまうことがある。丁寧な対応が必要なのにそこ軽視して、ろくに謝罪もしないとなると結果は容易に想像できる。


 数年前、デパートでスーツをオーダーした際に、上着の内側のネームが間違っていたことがある。家人がそれを指摘すると「書き間違えたのでは?」と言われ、腹を立てていた。先方は責任逃れをしたかっただけかもしれないが、自分の名前を書き間違える人はそういない。デパート側にどこか手違いがあったはずなのに、素直に認めなかった。ネームをやり直すのは難しいらしく、交渉の末、最終的にはスーツそのものをつくり直すことになった。コストがかかるから避けたかったと思わずにはいられないし、だからこそ客側の落ち度にしたかったのかもしれない。


 ただ、客の立場でいえば不快感しか残らないし、最初にお詫びがあったらつくり直しまで求めなかった可能性もある。それ以来、家人は毎月のように行っていたそのデパートにまったく行かなくなった。小さなミスが大きな失敗になることもある。


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