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ADMRコラム100 EV販売で問われるセールスの”自信”

 アパレルショップに行くと、イチオシの商品をマネキンに着せている。さらには店員も同じ商品の色違いや、売れ筋の商品を身に着けていることが多い。お客様は、棚に並べられている商品に比べ、自分が着ている姿をイメージしやすいのは間違いない。そのうえ「この服、着心地良いですよ」と説明する際にも、実体験だけに説得力が増す。


 家電量販店でも同じような経験した人は多いのではないか。自分が興味を示した商品の説明を店員に求めると「私も同じもの(または一つ前のモデル)を使っていますが、良いですよ」と言われたことがある。手入れの方法などを細かく聞くと、実際に使っているだけに分かりやすく、購入の決め手になった。


 ユーザーとしての「体験」があるから、商談の際に「自信」をもって勧めることができる。セールスにとっては強みであることは間違いない。一方、自動車のような高額商品は、セールスが、新車が発売されるたびに購入するわけにはいかない。試乗などの機会はあるだろうが、“使い込んだ”経験にはならないだろう。それでも車格は多少異なっても同じメーカーのクルマに長く乗っているし、品質に関してはメーカーを信頼してもいる。なにより、これまで買ってくれたお客様からの声を聞くとクレームも少ないし、同僚のセールスに聞いても同じ答えが返ってくる。購入という「ユーザー体験」はしていないが、長い営業経験から、商品には自信を持っている。


 しかし、その経験が少なくて自信が持ちにくい商品も時には出てくる。EVがその典型だろう。各メーカーが新型車を相次いで投入したうえ補助金が手厚くなったこともあり、販売は好調だという。一方で現場のセールスは必ずしも積極的ではないという話を聞くことがある。「EVに興味があってセールスに質問したら、ハイブリッド車(HV)はいかがですかと言われた」「EVの航続距離やバッテリーの寿命などを聞いたが、いつもと違って自信がなさそうに見えた」―などである。


 メーカーが開発した新型EVの品質については信頼している。少なくともライバル車に引けを取ることはないだろうと考えている。商品知識や充電インフラなどの研修もあり、セールストークは一通りできるようになった。それでも積極的になれないのは“EV体験”が不足しているからではないだろうか。多くのセールスは、自身がEVを日常的に乗っているわけではなく、店舗のお客様にもユーザーはほとんどいない。航続距離やバッテリーの寿命、リセールバリューなど、周囲を見渡しても事例が少なく断言もしくは予測しにくいものもある。


 セールスはお客様と信頼関係を築くことを大切にしている。見方を変えれば、それを損ないかねないお客様からのクレームは避けたいのが本音だろう。ガソリンエンジン車やハイブリッド車であれば、長い経験から説明の“ツボ”が分かっているし、知識も蓄積しているから自信をもって勧めることができる。あえて経験の少ないEVを、不安を抱えながら提案するより心理的なストレスは少ないだろう。そのギャップを埋めるには一定の期間と実績が必要であることは間違いないが、経験がないことを理由にしていると、いつまで経っても自信がつかないのもまた事実だ。



 本コラムは今回で100回の節目を迎えました。皆様にご覧いただいたおかげで続けることができました。改めて御礼申し上げます。コラムに関するご意見、ご要望がございましたら弊社ホームページ(公式HPはこちら)のお問い合わせ欄を通じてお寄せいただければ幸いです。今後ともよろしくお願いいたします。

ADMR室長 髙橋賢治


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