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ADMRコラム98 人を怒らせるには

 ある人が、セミナーで「真面目な人が会社を壊す」という話をした。そのセミナー終了後、長い列ができて質問というより抗議を受けたということがあった。彼ら曰く「私は真面目に仕事をしてきたのに、その言葉はなんだ」ということらしい。


 私自身、会社の目的は利潤の確保にあると考える。従業員はそれを最優先すべきであり、「真面目さ」は直接的につながるわけではないという結論になる。またミスがないことや言われた通りに仕事をこなすのは悪いとは言わないが、そこに工夫や発展性は見られない。その考えでいくと、「真面目な人が会社を壊す」という言葉はあながち間違ってはいない。


 だとしたらセミナーの後、時間をかけて抗議をしてきた人は会社や仕事の本質を分かっていないのかといえば、そうとも言えないと思う。彼らは彼らなりの「正義」を信じて生きてきたのだから、それが否定されることは耐えられないだろうと、理解できるからだ。


 ところで、私はよく人を怒らせる。振り返ってみると、同僚、家族、友人など、私が怒らせてきた人は枚挙にいとまがない。ひとつ思い当たる原因がある。それは、先日妻にも指摘されたのだが、私はどうも本能的に相手の痛いところ、図星をついてしまうところがあるようだ。図星をつかれたとき相手は一気に防衛的な気持ちになってしまい、結果怒り出すことになってしまったということもあるのかもしれない。


 「真面目な人が会社を壊す」という話も受講者の心を防衛的にしてしまったのだろうと思う。先述の通り、彼らは彼らなりの「正義」をもって一生懸命働いてきた。そこに誇りがあるのだろう。一方でもしそれが否定されてしまったら、その人の人生も否定されることにならないだろうか。そういう防衛的な反応が長蛇の列につながったのだろうと思う。


 だからといって、彼らが誇っている、「真面目に働くこと」が良いのかといえばそうではない。会社にとっては真面目さよりも効率的な働き方を優先するはずだ。そこで怒りを鎮め、こちらの意図や考えを理解してもらうにはどうするか。


 まずは自分ではなく、相手の「正義」を聞きとることだ。必ずその人ならではの「誇り」があるはずだ。それを否定せず、自分の「正義」も提示する。そこからはすり合わせにより、お互いの「正義」の妥協点を見つける。これだったら相手が防衛的にならず、一部でも話を聞いてもらえるだろう。


 もちろん、これには時間がかかるし、手間もかかる。自分の「正義」が相手にすべて浸透しない可能性もある。逆を言えばマネジメント層はそれを覚悟して部下に向き合うべきだろう。もしそれができないとすれば、少なくとも風通しのよい組織とは言えないのかもしれない。


 人を怒らせることは簡単だ。相手が大事にしていることを否定すればよい。逆にそこから学べることもある。人を動かすには相手の大事にしていることを最大限尊重するべきなのだ。


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