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ADMRコラム83 釣った魚には…
大学生の会社説明会が今月から解禁となり、来年4月の採用に向けた企業の活動が本格化した。対象者、つまり卒業予定者は約54万人だそうで前年より3万人ほど少ないという。そもそも18歳の新成人の人数は1970年の約246万人がピークで、以後は減り続け現在は半数以下の約109万人にとどまる。若者の絶対数が減ってきているから、高校卒や2年生の専門学校卒の人数も少なく、新卒を採用するのは難しくなる一方だ。
事業を継続するにはどの会社も人員は必要だ。若者がかつての半数以下だからといって採用を半減するというわけにはいかない。人員構成のバランスを維持する必要がある。AIで対応できることが増えているとはいっても、現状ではごく一部で大企業でも予定していた採用計画になかなか届かないという話もしばしば聞く。自動車販売店や整備工場も整備士の採用は希望する人員の半分にも届かないところが少なくない。
まさに「売り手市場」だから、そこに対応しなければならない企業側は大変だ。初任給は上げなければいけないし、有給をはじめ福利厚生の充実も欠かせない。先日、会社説明会解禁のニュースをテレビで観ていたら、学生が「有給や手取りを重視しています」とインタビューに答えていた。一昔前なら「そんな人は採らない」と採用担当者も即答していたかもしれないが、今はそんなことは言っていられない。学生に「選んでもらえる」企業にならなければ採用は覚束ないのが現実だろう。
新卒採用の条件が良くなるのは自然な流れと言えるが、一方で“ちょっと前の新入社員”はどうなっているか、気になるところだ。初任給を増やしたら、その一年先輩、二年先輩の給与はどうなるのか。会社の原資に余裕があれば同じ比率で引き上げることはできるだろうが、容易ではないという話も聞こえてくる。「逆転現象」はさすがにないと思うが、「新入社員とあまり変わらない給料」ではモチベーションに影響するだろう。
新卒者の3年以内の離職率は3〜4割に達すると言われている。3人に1人は3年以内に退職することになる。手間ひまかけて採用した貴重な人材で、研修やOJTを繰り返し、一人前に育てていく。そのめどが立ちかけたところで辞められると会社にとっては痛手だ。採用や育成を含めてコスト計算すると、会社側の損失は3年以内の離職者1人につき300万円から500万円になるという。実際には、その補充にかかる経費や、その人が在籍し続けて会社に貢献してくれるはずだった利益を考えると「被害額」はもっと大きくなるはずだ。
「釣った魚に餌はやらない」などという考えの会社はないだろう。ただ、新卒の採用ばかりに目を奪われて、社員の定着率を引き上げる取り組みが不十分になっていないか。その損失の大きさを考えたら、見直すべきところはもっとあるように思える。
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