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ADMRコラム60 仕事上の「矛盾」をどう捉えるか
最強の盾と最強の矛を戦わせたら、どっちが強いのか、という昔話を元に生まれたとされる「矛盾」という言葉がある。もし盾が勝てば、矛は最強ではないし、もし矛が勝てば、盾が最強ではないというジレンマを「矛盾」という。
もしこれが仕事であったらどうだろう。上司の言っていることに矛盾がある場合、例えば日頃から「何でもきいてくれ」という上司に実際に質問したところ、「自分で調べろ」と言われたら、あなたはどう思うか。きっと「どっちなんだよ!」とか「言っていることめちゃくちゃだな!」と憤慨するに違いない。 一方、部下が「明日までにできます」と言って、数日経っても頼んだ仕事が終わっていない場合、上司は「約束破り」と考え、二度、三度あると信頼しなくなる。「できると言った」にもかかわらず「まだできていない」もしくは「やっていない」のはなぜなのか?事前に約束したことと、現在の行動が「矛盾」しているということだ。
世間を見渡してみても、相手を論破するために、行動や発言の「矛盾」を探すことが多い。特にSNSを中心に、以前はこういう発言をしていたのに、現在はこのように発言している、おかしいなどと、有名人の発言を丁寧に調べ上げて攻撃する姿がしばしば見られる。他人の「矛盾」について、なぜ、そこまで熱意 と労力を振り向けられるのか不思議だ。恐らく、自分以外の人の「矛盾」が許せないのだろう。もしこういう人が上司や部下にいるとやっかいだ。
人間誰にでも「矛盾」があると記していたのは作家の池波正太郎だった。誰からも良い人と言われ善行を重ねている人が、実は人知れず悪事を働いている。その逆もしかり。極端かもしれないが、多かれ少なかれ人は理屈では説明できないことを時にしでかしたりする。
なぜ部下は「明日までにできます」と言ったあと、仕事を何日も放っておいたのだろうか。部下だって発言と行動が「矛盾」しているということは気づいていたかもしれない。例えば、折に触れ「大丈夫か」とか「仕事終わりそうか」などと声をかけてみる。すると別の仕事を優先せざるを得なかったとか、そこまで手が回らなかったというやむを得ない事情があったかもしれない。大事なことは「矛盾」だからと言って、相手を責めないことだと思う。そこにコミュニケーションのきっかけがある。非難より前に対話を心掛けることで関係悪化が避けられる可能性は高まる。
発言や行動の「矛盾」は一見すると非難の対象となる。しかし実はそこには人間らしい理由があるのかもしれない。そうであるなら、「矛盾」というのは、周りがどう捉えるかによって良い方向にも、悪い方向に転ぶということではないだろうか。
※このコラムは毎週水曜日に掲載いたします。またADMRではYouTubeで動画配信を行っています。ADMR公式チャンネルはこちらからご覧いただけます。