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ADMRコラム56 期待以上のおもてなし
居酒屋の接客というと、若いスタッフが「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」と元気に声を張り上げ、配膳や片付けもてきぱきとこなすイメージがある。先日、たまたま入った店もそうだった。ダーツやビリヤードもある若者向けの店で、場違いな雰囲気もあったのだが、せっかく入ったのだからとゆっくりすることにした。
メニューもピザや揚げ物以外に年配者が好みそうな料理が用意され、若いスタッフも気さくに話しかけてくれる。居心地もコストパフォーマンスも合格点が十分つけられると一緒にいた知人と会計を済ませて店を出たのだが、店のスタッフが2人、外まで出てきてエレベーター(店はビルの二階にあった)が閉まるまで見送ってくれたのは驚いた。高級な飲食店ではよくあるが、居酒屋でスタッフが店の外に出て見送ってくれるのは珍しい。
アンケートがあるとすれば会計の時点で「満足」「知り合いに紹介したい」だったものが、見送りを受けたところで「大いに満足」「ぜひ紹介したい」(そんな項目はないかもしれないが)に評価が上がったといったところだろう。こちらの期待以上のおもてなしというのは、それくらい嬉しいし、知り合いにも紹介したくなる。
店内にいるときにスタッフと話したところ、店は開店して3カ月ほど。人手不足で人員確保が難しいのではと聞くと「アルバイトで入っても評価されれば社員になれる」仕組みで、実際にそのスタッフも社員になったばかりで収入が増えたと喜んでいた。そして何より「仕事が面白い」と言っていたのが印象に残った。朝9時から夕方5時勤務の土、日休みというわけではない。接客では大変なこともあるだろう。人気業種とは言えないだろうが、それでも仕事をとスタッフは言う。待遇、職場の雰囲気づくりなど会社はあの手この手で、従業員が集まり定着する環境をつくろうとしていることはスタッフとの会話でもわかった。
店に入っても挨拶すらろくにしない。何度も行っているのにこちらの名前や好みを覚えようとせず、初めての客と同じような扱いをする。飲食店に限らず、そうした店は少なくない。「期待値以下」の対応でがっかりさせられる。自動車販売の現場でもそうした話を聞くことがある。店に行ったら「担当者が別の客の対応をしていて目も合わせず挨拶にも来ない」。質問したら「後ほど返事しますと言ったのに、電話はおろかメールも来ない」―。
人手が足りない、忙しすぎるなど、店側もそこで働くスタッフも言い分はあるだろう。事情を聞けば、やむを得ないと思えることも多いはずだ。ただ、期待値以下のサービスしか提供できない店は客が遠のき、期待値以上であればファンが増える。それだけは間違いない。
※このコラムは毎週水曜日に掲載いたします。またADMRではYouTubeで動画配信を行っています。ADMR公式チャンネルはこちらからご覧いただけます。