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ADMRコラム㉙ ”カリスマ”か”老害”か
若くして役員に抜擢され、実績を残し社長に就任した。経営手腕を発揮し業績を大幅に向上させた後、実力会長として君臨する。オーナー企業はもちろん、それ以外でもここまではしばしば見られる。”分岐点”はここからだ。年齢が70歳も過ぎる頃になると、名誉会長や相談役または顧問となり、第一線からフェードアウトしていのが一般的だ。しかし、中には会長を長く務めたり、会長退任後も取締役にとどまるなどして経営の実権や影響力を保持し続ける人もいる。
その多くは「カリスマ経営者」と呼ばれる。スズキの中興の祖と言われた鈴木修氏、京セラの創業者で日本航空を再建に導いた稲盛和夫氏などの名がすぐに浮かぶ。人は年齢とともに体力、気力は衰える。とはいえ個人差があり、高齢になるほどその差が大きくなる。カリスマと言われた経営者は衰え感じさせなかった。
もつとも、体力、気力だけで社内、もっといえば世間からカリスマとして尊敬され続けたわけではないだろう。80台、90台になっても経営の実権を保持する人はいる。中には、どこかのテレビ局ではないが「老害」呼ばわりされる人もいる。体力、気力はあっても時代の変化が読めなくなり周囲を困らせる。自分が社長時代やその前に成功した経験にとらわれ、変革しようという意欲に欠けがちになる。そこに本人だけが気づいていない。
後期高齢者の年代となっても、能力があれば経営の第一線で陣頭指揮をとることが会社の発展や社員の幸せにつながることは間違いない。高齢化社会にふさわしい経営者で、カリスマとして評価され、社員から慕われ尊敬もされる。一方で老害になってしまう人は、会社の発展を阻害しかねないばかりか、業績低迷を招いたりする。そして社内からも「もう辞めてほしい」という声が多くなる。
市場環境、社会情勢の変化に敏感で、常に改革を意識する。成功体験は「昔の楽しい思い出」でしかない。むしろ失敗の体験から学ぶことが多いと語る経営者はたくさんいる。そこが分かっていなければカリスマにはなれない。思い出に浸りたかったら引退すればいい。
経営者だけではなく、管理職にも同じことが言えるのではないか。年齢こそ若いが「老害」のような管理職も少なくない。カリスマにはなれなくても、少なくとも「過去にとらわれず改革に前向き」と言われる上司でありたい。
※このコラムは毎週水曜日に掲載いたします