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ADMRコラム㉕ セールスの必要性
今から30年ほど前、まだ20世紀だった頃に「21世紀の自動車販売はどう変わるか」というテーマの原稿を頼まれたことがあった。インターネットがようやく普及し始めた時代で、21世紀にはネットで気軽にクルマが買えるようになり、ショールームやセールススタッフは減っていくのではないかといった内容にしたと思うが、今となっては当たっていることもあれば、まったく予想が外れたものもあるというのが正直なところだ。
IT産業の発展でインターネットは劇的に使いやすくなった。欲しいクルマのスペックやオプションなどはネットですぐに調べられるし、自動車保険を含め、ほとんどの商談がネット上で完結できる。訪問販売という言葉はすっかり聞かなくなり、家にセールスが来るのはもちろん、店舗での商談も最低限で済ませたいお客さまも増えた。ネットで大半の用事が済んでしまうからであり、ここまでは30年前にもある程度想定していた。
しかし、便利だからネットだけで完結させるという動きがそれほど広がらなかったのは筆者の読みが甘かった。クルマを買おうとしたら、ネットで基本的なことは調べるにせよ近くの販売店に行って実車を見て、場合によっては試乗もする。そして営業スタッフとの会話を通じて不安や疑問を解消し、購入を決定する。もう少しネットだけで済ませる人が多くなると思ったが、そうはならなかった。
一般的に、クルマは家に次ぐ大きな買い物だから慎重になることもある。担当者と会話して分からないことを聞くだけでなく、適切なアドバイスをしてもらえることは大きなメリットだ。さらに「買った相手、担当者の顔が見える」ことは、ネットにはない安心感なのだろう。自動車保険のネット通販もほぼ30年前にスタートし”黒船襲来”などとの言い方もされたが、一定のシェアにとどまっている。事故の際には顔見知りの担当者に連絡すればいいという安心感はネットにはない強みであり、だからこそ対面販売が今も多いのだろう。
AIは急速に進化し、自動車業界も大変革のただ中にある。販売の現場も効率化が求められ、ITを駆使しなければ仕事にならなくなりつつある。それでも、人と人とのつながりを求めるお客さまがいる限り、今の商談スタイルは続く。そのためにもお客さまから「選ばれるセールス」であることが、これまで以上に求められる。提案力、雑談力―どんなことでもいいから、営業として自分なりの強みに磨きをかけたい。
※このコラムは毎週水曜日に掲載いたします