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ADMRコラム⑱ 失敗できる余地
「失敗してもいいから、どんどん新しいことに挑戦しよう」―幹部や管理職がそう言えば、みんなが前向きになると本当に思っていますか?
企画書をつくったりプレゼンの段階では高評価で、上司も背中を押してくれる。意気込んでスタートしたものの、どうも結果は芳しくない。同僚や他部署の人はどこか冷めた目で見ている。実際は応援してくれている人もいるのかもしれないが、気持ちが空回りして、すべてが否定的に見えてしまう。
そこに追い打ちをかけるような上司の一言。「どうにかならないか。このままでは私も君も会社からの評価が下がってしまう」。チャレンジ精神が大切と、日頃から幹部は言っているが、すぐに結果を出さなければ「失敗」の烙印を押して、それで終わりなのか。「こんなことなら新規の企画など、やらない方がよかった。ルーティンの仕事だけしていれば評価が下がることもなかった」。そう思っている人が多い会社に、前向きな意見など出るはずがない。
失敗したらリベンジすればいいし、失敗から学べることも多い。セカンドチャレンジで初回のマイナスを大きく上回る成果をあげられれば、会社にとっても得られるものは大きい。なにより、その担当者は得難い経験をして成長できる。それが分かっていながら、つい目先の結果ばかり気になってしまう。
本来、新しい企画、プロジェクトを進めるうえでリスクは織り込んでいる。若手、中堅管理職、幹部はそれぞれの地位と権限に応じて「失敗できる余地」があるはずだ。失敗を許容する余裕がないと、会社全体でも挑戦しようという意欲がなくなるし、そこから得られる貴重な”学び”を逃すことになってしまう。
大手用品量販店の社長を務めた人は「課長時代、新しいビジネスを考え、それなりの投資もしたが見事に失敗した」と苦笑しながら話した。「それでも社長になれるのだから、良い会社だと思う」。日本を代表する大手企業に勤める友人は「うちの会社は大きな失敗をした人ほど出世している」と言っていた。理由はリカバリーを含めて、いろいろな経験をしているからだという。
それぞれの立場で”許される失敗”ならば経験した方がいい。それを認めて次の成長に期待できるかどうか、掛け声ではなく会社の本気度が問われる。
※このコラムは毎週水曜日に掲載いたします