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ADMRコラム⑰ 決断できない客へのアプローチ

芸能人が職場体験をするというテレビ番組で印象に残った言葉がある。デパートのネクタイ売り場で、その芸能人は来店客に次から次へと商品を持ってきて20本以上もの中から選んでもらおうとするが、購入までには至らない状態が続く。そこでデパートの店員がアドバイスした。「お客様の好みを聞いておすすめの品を3本程度に絞った方がいい」―。 実践すると売れ始めた。「選択の幅が広すぎるとお客様は迷ってしまい決められない。だから私たちが選びやすいように、ある程度絞ってあげるとが必要で、そこが売り手の腕の見せ所でもある」と店員は説明していた。   1本10万円以上する高級自動車ホイールのメーカー関係者にも同じような話を聞いたことがある。「高級品ばかり扱うプロショップのスタッフは、お客さんの背中を押すのがうまい」。逆に廉価品を含め幅広い商品を扱っているところは「つい、もう少し安いものもありますと言ってお客さんを迷わせてしまい、売れる機会を逃してしまうことがある」そうだ。 客は決断するきっかけを求めている。価格に見合った価値があることを伝え、そのセンスを褒める。そうやって背中を少し押してあげれば商談はスムーズに終わる。高級ショップならば商品も客層も限られているから、それがやりやすい。しかし商品バリエーションが豊富だと、提案次第では客を迷わせてしまう。   幅広いニーズに応えることはビジネスの基本と言えるが、クロージングするためには提案する商品の絞り込みも時には必要だ。それができないと迷う客の背中を押してあげるどころか逆効果になりかねない。 自動車販売の現場では車種、グレードから金融商品、オプションまでバリエーションや組み合わせは多すぎるくらいあり、営業はそれぞれの商品知識を覚えきれないほどだ。 「あれもあります、これもあります」となってその場で決められず、家に持ち帰って検討というパターンになりがちという話も聞く。考える時間が長くなれば、他社の話を聞く機会も出てきて客の決断は遠のく。   家電量販店に行くと、商品ジャンルとに人気のベストスリーを表示してある。実売数か、店側の推奨度合いか基準は明確ではないが、その3モデルの中から選ぶ客は自分も含めて多いのではないだろうか。”提案の絞り込み”はもっと検討してもいい。。   ※このコラムは毎週水曜日に掲載いたします