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ADMRコラム⑨ 後から響く言葉

初めて営業部門の管理職となって半年ほど経った頃のことだった。思うように成果が上がらず、だれもいない会社の休憩スペースでため息をつきつつ、あれこれ思い悩んでいた。そこに営業部門出身で別の部署にいた20歳近く年上の先輩が通りかかり、落ち込む私を見かねたのか「何かあったの」と話しかけてきた。   私は営業とは別の部署が長く、その先輩とは接点がほとんどなかった。挨拶する程度の関係だったが、「営業の成績が上がらなくて」とグチをこぼすと「もっと遊ばなければだめだよ」と笑いながら言った。こちらとしては「こんな企画はどうか」とか「あのクライアントにはこういう提案が歓迎される」など、すぐにでも実績につながるようなアドバイスを期待していたが、はぐらかされたような気がした。   それから数年後、部下に仕事の相談をされているときに、先輩の言葉を突然思い出し「そういうことだったのか」と腑に落ちた。部下は真面目で、自分に与えられた予算をクリアするために提案書を持って走り回っていた。商談も一直線に企画のメリットをアピールするが、思うように結果が出ない。押すだけではなく時には引いて相手の話をじっくり聞き、雑談をしながらコミュニケーションを深める。仕事以外の「遊び」がその時に役立つ。先輩に聞いた当初はわからなかったが、ある程度経験を積んだからこそ理解できるようになった。その時「自分も少しは成長できたかな」と嬉しくなったことを覚えている。   コストパフォーマンスはもちろん、最近ではタイムパフォーマンス(タイパ)が重視されるという。時間効率を優先して最短距離で結果を求める。それが悪いとは言わないが、目先の利益や効率ばかり追いかけていると視野が狭くなる可能性が高い。商談、もっと言えば仕事を進めるうえで臨機応変に対応するには、多くの「引き出し」が必要となる。人としての幅を広げるという言い方もできるが、それには「遊び」、つまり仕事以外の様々な経験が必要ということだ。   「今は理解できなくてもいいが、頭の片隅に残しておいてほしい」。この時のことをきっかけに、部下に対し将来のことを考えたアドバイスを意識的にするようになった。効果のほどはわからないが、最短距離ばかり求めるのではなく、時にはムダとも思える回り道も役に立つことをわかってほしいという気持ちだった。「親の意見と冷酒は後できく」という言葉もある。即効性はないが、長い時間をかけて実感したこと、身に着けた知見は大きな財産になるはずだ。タイパ重視の時代だからこそ、回り道の重要性を忘れたくない。   ※このコラムは毎週水曜日に掲載いたします