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ADMRコラム59 「元管理職」と「現場一筋」―シニア社員の強みと弱み
55歳で役職定年、かつての部下のサポートに回り権限、収入を含め環境ががらりと変わる。そして60歳の定年で給与はさらに下がり再雇用となり年金が出る65歳まで働く。ただ、仕事は役職定年以降、「やりがいはあまり感じられない。年金までのつなぎ」という”元管理職”は筆者の周囲にもたくさんいる。それまで第一線で部下を指導してきた人が役職を解かれ、それまでと比べるとあまり重要でない(少なくとも本人はそう思っている)業務を淡々とこなすだけ。もちろん収入は下がり、60歳を境に正社員でもなくなり、給与はさらに減る。
こうした状況に不満があり、中には定年を機に会社を去っていく人もいる。長くサラリーマンを経験してきた身としては理解できないわけではない。ただ、会社の仕組みや経営の観点から考えるとやむを得ない面もある。管理職=マネジメント層は毎年、新たな人が補充される。一方でポストは限られるから、どこかで区切って年長者からはずれてもらわないと組織がいびつになってしまう。年功序列的な賃金体系であれば年齢が上がるほど人件費は上昇するので、コストを抑える意味でも役職定年などの制度は、ある程度必要ということになる。
問題は管理職をはずれた人の「次の仕事」である。管理職を長くやるほど現場の業務が分からなくなる。部下への指導、部署全体の成績に責任を持つといったマネジメントが本業になり、現場の実務から遠ざかるからだ。マネジメントのノウハウを持つとはいえ、役職定年とともに必要なくなる。後任の管理職の相談に乗るという業務もあるだろうが、どれほどニーズがあるか。現場の仕事は不向きで、プライドが高く「今さらこんな仕事はやりたくない」という人も少なからずいる。会社にとっては功労者ではあっても、どんな仕事をしてもらえばいいか気を遣わねばならず、元管理職は悩ましい存在でもある。
一方で、管理職にならず、なったとしても短期間で現場が長かった人はどうか。実務に精通しているだけに再雇用でもそれまでのノウハウが生かせるし、会社としても仕事の割り振りで悩むことはない。自動車流通の現場でも「営業一筋40年」とか「メカニックとしてずっとやってきた」という人がいる。大手では体力的に難しいといった理由で、一定の年齢で第一線から退いてもらうケースも多いが、人材確保が難しいだけに”有効活用”しないともったいない。
お客様もシニア層が増え、同年代のスタッフが話しやすいという人もいる。ベテランの経験を学びたい管理職や若手もいるだろう。長年の実績をリスペクトする名誉職的な肩書と、整備士であれば資格手当などで給与減を少しでもカバーする制度があればプライドにも配慮でき、会社も本人もメリットがあるのではないだろうか。
※このコラムは毎週水曜日に掲載いたします。またADMRではYouTubeで動画配信を行っています。ADMR公式チャンネルはこちらからご覧いただけます。