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ADMRコラム54 野球強豪校の人材戦略
高校野球の予選が終わり、甲子園の出場校が出そろった。その多くは、私立の強豪と言われるところか、野球部を重点的に強化し、地元では新興勢力として注目されている学校だ。中学生の有望選手を全国からスカウトし、監督以外にも専門のコーチを置いて徹底的に鍛え上げる。もともと素質のある選手を集めているうえ、競争が激しく高いレベルの練習を積み重ねるのだから強くなって当然とも言える。
部活動は教育の一環であり、こうした私立高校のやり方に批判も出るが、現実には甲子園に出れば宣伝効果は大きく学生からの人気は高まる。学校経営もビジネスという側面があることを考えると、経営側の選択しとして「野球部強化」という選択があってもおかしくないだろう。筆者の故郷の甲子園出場校も、かつて女子高だったが共学化を機に野球部を強化し、この十年ほどで全国大会でも結果を残し強豪校になった。その結果、入学希望者も増えたという。経営陣の目論見は成功したと言っていい。
企業経営の観点で見ると、こうした”経営戦略”は理にかなっている。優秀な人材を一人でも多く集めたいから採用担当者(リクルーター)が学校を回り、説明会などで会社の魅力をアピールする。野球強豪校のスカウト担当者とやっていることはそう変わらない。もちろん優秀と目される学生が見込み通りに活躍するとは限らないが、確率が高いのは間違いない。しかも、多く集まれば競争意識が高まり、切磋琢磨し合うことも期待できる。そして人材教育。強豪校ではナイター設備のある専用グラウンドに室内練習場は当たり前で、筋トレ設備や動作解析の分析システムも用意している。インフラを整えるばかりでなく、投手、打撃、トレーニングなど分野ごとに専門知識をもつ指導者も置き、きめ細かく指導する。潜在能力が買い(と思われる)人材を集め、各分野の専門家が育て上げる。人材育成のための投資を躊躇しない。
これに対し企業の取り組みはどうだろうか。同業他社に比べ見劣りする福利厚生、少ない休日、低い初任給―分かっていても「今まで採用できたから」「わが社には目に見えない良いところがある」と変えようとしない経営陣。人材育成は「OJT」という名の現場、本人任せで育成に人手も手間もコストもかけない。もちろん企業体力の問題があり、理想通りにはいかないことが多いかもしれない。それならば強化したい分野を絞り込むのはどうか。学校も、学業やスポーツ全般すべてで優秀な成績を収めるのは難しい。実績のないジャンルの中から成功しそうなところを絞り込み、そこに一定のヒト、モノ、カネを集中投下している。人材確保に苦労している企業ほど人への投資を抜本的に変えないと、少子化の中で存続すら危うくなりかねないことを知るべきではないか。
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