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ADMRコラム⑯ 整備士の1000万円プレーヤー

「頑張っている人にドーンと出す。そうしなければ人は集まらないし将来展望も開けない」―社員数20人弱の整備工場の社長は言う。社員の年収は、最高で1000万円を超える。整備士の”1000万円プレーヤー”は珍しいが「それだけの働きをしている」と評価する。   整備士の平均年収は近年、増加傾向にあるとはいえ、自動車ディーラーで約490万円、専業者では400万円弱。決して高いとは言えない水準にとどまっていることが整備士不足の一因であることは間違いないだろう。 さらに、優秀な整備士を個別に評価する仕組みづくりが難しいことも、整備士への”夢”を描きにくくしている。 営業ならば販売台数をはじめ数字で客観的な評価がしやすい。インセンティブはもちろん昇給・昇格も、頑張った人とそうでない人の差をつけることが容易と言える。これに対し整備士は個人の能力や実績を明確にしにくいため、会社や工場単位での業績評価はあるものの、年功序列で差がつきにくい給与体系になりかちだ。   どんなに頑張っても大幅に給与が増える可能性が低い。実際に1000万円プレーヤーの話を整備業界の人にすると驚かれることが多い。「うちではどう考えても無理」「給与制度で大きな差がつかないようになっている」など、給与制度や経営状況を理由に後ろ向きの発言となる。 現実は確かにそうだろう。ただ、整備の技術をいくら磨いても、お客さまに丁寧に説明しても、個人の努力と成果が評価されにくい中で、働きたいと思う人が増えるだろうか。   1000万円プレーヤーを実現させた社長は言う。「大企業に勤める友達や同級生と同等以上の年収があれば胸を張れる。そういう整備士がいれば目指してくれる人も出てくるのでは」。 評価の難しさについては「全社員に目配りができる規模だから、数字にはならないところも判断できる面がある」と、規模が大きくないことの利点を生かしている。また、ベースとなる給与で他の社員と大きく差をつけるとハレーションが起きやすいと考え賞与の配分比率を大きくするなど工夫もしている。 整備業界の経営環境を考えると、一律で大幅な底上げをするのは現実的ではないのも事実だ。だからこそ、限られた原資の中でどうメリハリをつけるか。能力や実績が抜きんでている人には相応の対価で報いる―評価が難しいと二の足を踏んでいては、整備士不足はさらに深刻化しかねない。   ※このコラムは毎週水曜日に掲載いたします